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忘れられる、キスを
第35章 買い物
星くんに手を引かれ、やって来たのは下着専門店だった。
パステルカラーの可愛らしい下着が所狭しと並んでいる。

「な、え、ここ…?」
「さすがに、俺一人で入るわけにはいかないでしょ」

それは、そうなんだけど。
でも…でも……!!
なんでこんなところに…!

「先輩?変な顔して、どしたの?」
「だ、だって…星くん、ここで何を…」

頭が混乱している私に、星くんはにやっと笑う。

「そりゃあもちろん、先輩の、選ぼうと思って」
「い、いいよ…!自分で…っ」

星くんは強引に私の腕を引っ張り、店内に入る。
店の中にはカップルでいる人たちも多い。
皆、楽しそうに選んでいる。

下着屋に男の人がいるのは、何となく嫌だった。
その人たちが自分のことを気にしていなくても、こっちはどうしたって気になってしまう。
洋服を選ぶのとは、訳が違う。
誰にも見せない、本来隠すべきものを選ぶ所を見られるのは、どうにも恥ずかしい。

ましてやそれが、自分にごく身近な人なら、なおさら。

「黒、とか、似合いそうだよね。先輩、肌白いし」

レースがふんだんに使われた黒のブラを後ろから私に合わせる。

「やっ…な、なにしてんのもう!」
「だって、先輩に似合いそうだから」

しれっと言った星くんの手の甲を思いっきりつねった。
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