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忘れられる、キスを
第36章 温泉旅行
部屋に戻ると早速夕食になった。
近海で獲れる海の幸がふんだんに使われた豪華なメニューだ。

「食べられそう?」
「うん、すごいね、どれも美味しそう」

先輩は普段より、ゆっくり食事をしていた。
それでも、料理のほとんどがなくなっていた。
少しだけ、といって頼んだ冷酒も美味しく、そのせいもあってか、先輩はなんとなく、ご機嫌だった。

「美味しかったね」
「ん、全部食べられたんだ。食欲戻った?」
「そうかも」

ほんのり酔いの回った先輩が、ふわりと笑う。
その表情はなんとも言えない可愛さで、思わず唇を重ねようとした。

「失礼いたします、お客様、片付けに参りました」

その声に、先輩が、ぱっと離れる。

あーあ、良いところだったのに。

てきぱきと食器を片付け、布団を敷いている仲居さんたちを恨めしく思う。

失礼いたしました、と言って仲居さんが出て行ったのを確認して、先輩を抱き寄せる。
そのまま、布団の上に倒れこんだ。

「ほ、星くん、スカート、皺になっちゃう…」
「じゃあ、脱ごうか」

ふるふると首を横に振る。
こんな仕草も、いちいち可愛らしい。
恥ずかしがる先輩に構わず、白いブラウスのボタンを外す。

「思ったとおり、似合ってる」
「や…そ、そんな…見ない、で」

俺の視界から逃れるように先輩が身体を捩った。
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