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忘れられる、キスを
第37章 露天風呂
「あのさ」

星くんが、ふーっと息をつく。

「焦らないで、いいから」

まあ、俺が言えることじゃないか、と笑った。
ちゅっ、と頬にキスをする。

「先輩が、嫌ならやめるし。無理させるくらいなら、しないし。だからーーーー」

両の手の平で頬を挟まれた。

「そんな顔、しないで」

笑って、と言われて、けれども、やっぱり申し訳なくて、涙が零れてしまった。

泣くなんて、ズルくて、嫌だ。

そう思っても、止められない。

「えっちゃん先輩」

星くんが再び私を抱き寄せる。

「さっき、先輩が、俺のこと嫌じゃない、って言ってくれたでしょ?あれ、すごく嬉しかった」

温かな胸に耳を付ける。
低い鼓動が聞こえた。

「買い物行ったのも、旅行来られたのも、手繋いで歩いたのも、全部、嬉しかった」

それと、と星くんが、にやっと笑う。

「お風呂も、一緒に入れたし」

言われると、途端に恥ずかしくなる。
顔、紅いよ、と星くんに指摘された。

「だ、だって…は、恥ずかしいんだもん…」
「散々、裸見せてるのに?」

星くんはあっけらかんとして言う。
何度見せても、恥ずかしいものは恥ずかしい。
離れようとして、引き戻されると、お尻に何かが触れた。

「や…なに…」
「…生理現象だから、気にしないで」

ごめん、とばつが悪そうに笑った。
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