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忘れられる、キスを
第38章 迂闊
軽い昼食をとり、家路についた。
先輩は、ロマンスカーの中で俺の方に頭を乗せ、小さく寝息を立てている。
ちょっと無理矢理にでも連れ出して良かった。
穏やかな寝顔に、ほんの少し、安堵する。
まだ、心の傷は完全に癒えていないだろう。
けれども、こうして寄りかかってくれるのは、信頼の証か。
『支えが必要だ。安心して心を預けられる誰かが』
早坂さんの言葉が、脳裏をよぎる。
俺に預けて。
心も、身体も。
そっと、指を絡める。
「ほし、く…」
寝言、か。
顔にかかる髪を掬う。
薄らと開いた唇に、口付けようとした、その時。
低いバイブ音が響いた。
「ひゃ…」
ポケットからの振動に驚いた先輩が目を覚ます。
慌てて、携帯を取り出した。
「電話?」
「あ、早坂さんだ」
先輩がデッキの方へ行く。
しばらくして、戻ってきた先輩はなんだかまた嬉しそうな顔をしていた。
「何だって?」
「今度の日曜、早坂さんの家でランチどう?って」
上司の家に呼ばれるなんて。
仲、良すぎじゃない?
思わず変に勘ぐってしまった俺に気づいてか、先輩が眉を下げる。
「星くんも、一緒にって」
「え?俺も?」
「千代子さんが、会いたいって」
……千代子さんって、誰です?
先輩は、ロマンスカーの中で俺の方に頭を乗せ、小さく寝息を立てている。
ちょっと無理矢理にでも連れ出して良かった。
穏やかな寝顔に、ほんの少し、安堵する。
まだ、心の傷は完全に癒えていないだろう。
けれども、こうして寄りかかってくれるのは、信頼の証か。
『支えが必要だ。安心して心を預けられる誰かが』
早坂さんの言葉が、脳裏をよぎる。
俺に預けて。
心も、身体も。
そっと、指を絡める。
「ほし、く…」
寝言、か。
顔にかかる髪を掬う。
薄らと開いた唇に、口付けようとした、その時。
低いバイブ音が響いた。
「ひゃ…」
ポケットからの振動に驚いた先輩が目を覚ます。
慌てて、携帯を取り出した。
「電話?」
「あ、早坂さんだ」
先輩がデッキの方へ行く。
しばらくして、戻ってきた先輩はなんだかまた嬉しそうな顔をしていた。
「何だって?」
「今度の日曜、早坂さんの家でランチどう?って」
上司の家に呼ばれるなんて。
仲、良すぎじゃない?
思わず変に勘ぐってしまった俺に気づいてか、先輩が眉を下げる。
「星くんも、一緒にって」
「え?俺も?」
「千代子さんが、会いたいって」
……千代子さんって、誰です?