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忘れられる、キスを
第39章 ランチパーティー
星くんは千代子さんに散々飲まされたようで、最後はふらふらになっていた。

「絵津子ちゃん、星くんに、たくさん甘えて良いんだからね」

帰りがけに、千代子さんが言った。

「誰にだって心の拠り所は必要なの。星くんは、ちゃんと、受け止めてくれるから、安心しなさい」

軽くウィンクをして、千代子さんが手を振った。
ありがとうございました、と挨拶をして、星くんを引きずるように外へ出た。

早坂さんが心底申し訳なさそうな顔で私たちをタクシーに乗せてくれる。

「星くん…悪かった……千代子には言っておくから…じゃあ、深町、また明日」
「はい、また」

バタン、と扉が閉められ、スーッと景色が流れた。
星くんの頭がこてん、と私の肩に乗る。
すぐさま寝息が聞こえてきた。

「星くん」

千代子さんは知らないだけで、私、星くんにいっぱい甘えてるのにね。

この一週間を思い出して、苦笑する。
甘えて、拒否して、また寄りかかって。
そんな私を星くんは嫌な顔一つせず、全部受け止めてくれた。
私にはもったいないくらい、素敵な男の子だ。

「ん…えっちゃ…せんぱ…」

赤らんだ顔が緩んでいる。
幸せな夢でもみているのだろうか。

すっかり眠り込んでしまった星くんの顔を眺めていたら、いつの間にか家の前に着いていた。
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