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忘れられる、キスを
第40章 友達
「俺も、可愛い女の子二人と弾くよ」

俺といるのに、倉田先輩のことを話すえっちゃん先輩に、ちょっとだけ意地悪く、言った。

「そう、なんだ」
「…そ、そうだよ」

ふうん、と表情を変えずに相槌をうつ。

あれ、ヤキモチ妬いてくれない?

思惑が外れて、思わずため息が出る。

先輩は、俺のこと、どう思っているのだろうか。
隣にいることも、触れることも、許してくれているけれど、好き、の一言が聞けない。

待つ、と言った手前、その言葉をせがむことはできない。
それでも、不安になってしまう。

俺のこと、好き?

パラパラと楽譜をめくる先輩の横顔を眺める。
窓からの光に照らされ、穏やかで、優しい、俺の好きな横顔。

「聴きに、来てくれる?」

うん、と微笑む。

「リストもトリオも、楽しみ」
「バンドの方も来てよ」

うーん、と今度は微妙な反応。

「第一体育館でやるライブ、だよね?」
「そ。ゼミの友達がボーカルで」
「なんか…毎年すごい人でしょ、ちょっと苦手…かも…」

まあ確かに、毎年文化祭で行われる校内バンドライブは異様な盛り上がりを見せる。
学内とはいえ、慣れない人には体育館に入るのも勇気がいるだろう。

「俺の出るとこだけでいいから、ね?」
「……考えとく」

眉を下げ、ふっと微笑んだ。
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