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忘れられる、キスを
第40章 友達
同じ日に三つも本番を抱えるとやはり忙しい。
所属の団体もばらばらだと、なおのことそれぞれのスケジュールを合わせることが難しくなる。
十一月の文化祭が近付くにつれて、週末すら先輩に会えないこともあった。

「リュウ、どうした、冴えない顔して」

開店前の『スターライト』で練習する俺を眺めていた店長が言った。
ボトルの在庫チェックをしていた伊東さんがクスクス笑う。

「そりゃ、店長、絵津子ちゃん関連ですよ」
「ケンカ…ああ、振られたんか」

大人気ない大人たち二人は、勝手なことを言ってケラケラ盛り上がっている。

「ケンカもしてないし、振られてません」

ただ…と言いかけて、はっとする。
が、もう遅い。
伊東さんが、ただ?とオウム返しに言ってニヤニヤとこちらを見ている。

「文化祭近いから忙しくて…会えないんですよ、あんまり。それだけです」
「だからって、シフトは減らせないぞ?」
「…う、はい……」

授業と練習、それに『スターライト』のバイトで俺の一日はいっぱいいっぱいだ。

「あんまり寂しい思いさせると、うっかり誰かに取られちゃうかもよ?」

それは絶対イヤだ。

「あの、今日早退させて下さい!」
「却下」

店長の、ケチ。
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