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忘れられる、キスを
第40章 友達
その日店長は結局俺を閉店まで帰してくれなかったが、数日後、突然「今日はもういいぞ」とディナータイム前に帰してくれた。
戸惑いと申し訳なさでオロオロしてしまったが、「俺の気が変わらないうちに早く帰れ」と、追い払うように手を振る店長に頭を下げて俺は『スターライト』を飛び出した。

秋の日はつるべ落とし、とはこのことで、五時過ぎだったが外は大分暗くなっていた。

この時間なら、ちょうど先輩が帰る頃に会えるかもしれない。

メールなりで連絡しても良かったが、ちょっと驚かせてやりたくなって、先輩の会社の入っているビルの入り口が見える通りの向かい側で待つことにした。

六時頃まで待って、会えなかったら電話してみよう。

暑さもかなり和らいで、外の風が心地よい。
入り口からは何人かが出たり入ったりしていたが、先輩の姿は見えない。
そろそろ六時になろうとしていた頃、ようやくそれらしき人影が現れた。

ふわっとしたスカートにベージュのジャケットを合わせている。
肩まで伸びた髪をハーフアップに纏めていた。
間違いなく、先輩だ。

タイミング悪く、信号が渡れない。
先輩は俺の方に気付くことなく、すたすたと駅の方へ向かう。
電話をかけようとして、ふと手が止まった。

誰かに、話しかけられていた。
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