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忘れられる、キスを
第40章 友達
背の高いスーツ姿の男に話しかけられていた。
薄暗くて、相手の顔がよく分からないがナンパではないようだ。
二言、三言話して、二人は並んで歩き出した。
先輩が向かっていた駅の方とは逆方向に歩き出し、俺は慌てて物陰に隠れた。
隠れる必要なんて、全然なかったけれど、なんとなく、だ。
夕暮れの街に消えていく二人の後ろ姿をぼんやり見つめる。
あーあ、行っちゃった。
せっかく店長が気を遣ってくれたのに。
はは、と乾いた笑いが零れた。
情けなさに、がっくりと肩の力が抜ける。
あの男、誰なんだろう。
顔は見えなかったけど、知り合い、だよね。
警戒心なさそうなのはいつものことだけど。
こんなことなら、電話でもメールでもしてから迎えに行けば良かった。
疑問と後悔とがぐるぐると回る。
なんだよ、それ。
俺に甘えてくれてたじゃん。
キス、気持ちいいって言ってたじゃん。
手繋いで歩いて、一緒の布団で寝てたじゃん。
なのに。
俺だけじゃ、ダメなの?
たかだか知らない男と二人で歩いている所を見ただけなのに、苛々とした気持ちがせり上がってくる。
子どもっぽい嫉妬心と独占欲が、むくむくと大きくなる。
『あんまり寂しい思いさせると、うっかり誰かに取られちゃうかもよ?』
脳裏に過った伊東さんの言葉を、頭を振って打ち消した。
薄暗くて、相手の顔がよく分からないがナンパではないようだ。
二言、三言話して、二人は並んで歩き出した。
先輩が向かっていた駅の方とは逆方向に歩き出し、俺は慌てて物陰に隠れた。
隠れる必要なんて、全然なかったけれど、なんとなく、だ。
夕暮れの街に消えていく二人の後ろ姿をぼんやり見つめる。
あーあ、行っちゃった。
せっかく店長が気を遣ってくれたのに。
はは、と乾いた笑いが零れた。
情けなさに、がっくりと肩の力が抜ける。
あの男、誰なんだろう。
顔は見えなかったけど、知り合い、だよね。
警戒心なさそうなのはいつものことだけど。
こんなことなら、電話でもメールでもしてから迎えに行けば良かった。
疑問と後悔とがぐるぐると回る。
なんだよ、それ。
俺に甘えてくれてたじゃん。
キス、気持ちいいって言ってたじゃん。
手繋いで歩いて、一緒の布団で寝てたじゃん。
なのに。
俺だけじゃ、ダメなの?
たかだか知らない男と二人で歩いている所を見ただけなのに、苛々とした気持ちがせり上がってくる。
子どもっぽい嫉妬心と独占欲が、むくむくと大きくなる。
『あんまり寂しい思いさせると、うっかり誰かに取られちゃうかもよ?』
脳裏に過った伊東さんの言葉を、頭を振って打ち消した。