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忘れられる、キスを
第41章 文化祭
それからあっという間に、文化祭当日を迎えた。
久しぶりの大学は、たった3年ほどしか離れていないのに、懐かしくもあり、同時にもうここはお前の居場所ではないといわれているようなさみしさもあった。

学内の奥にあるホールにはお昼すぎということもあり、既にかなりの人が入っていた。
後ろの方の空いている席を探し、座る。
開演のアナウンスが流れ、客席が暗くなった。
入れ代わり立ち代わり、数人が演奏を終え、最後に星くんが舞台上へとやってきた。

客席に一礼して、鍵盤に向かう。

舞台中央の一台のピアノから波紋のように広がる音。
私の家の電子ピアノで弾いたときとはまるで違う。
きらきらして、ロマンチックで、情熱的な、愛の夢。

曲が終わり、ほんの少しの静寂ののち、いっぱいの拍手で会場が包まれた。
客席に向かって一礼する星くんが、ちらりとこちらを見た気がする。

30分ほどの入れ替え時間を空けて、オーケストラサークルの有志で行われるミニコンサートが始まる。
慌ただしいようだが、学内でクラシック系の演奏会を開けるのはこのホールしかないので仕方がない。
こちらも、時間が迫るとかなりの人が集まってきていた。

配られたプログラムノートには、それぞれの曲の演奏者の写真も載っていた。
星くんの両脇に可愛らしい女の子二人が立って笑顔を向けている。

チリッと心が痛んだ気がした。
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