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忘れられる、キスを
第46章 邪魔
「急に来るなよ…」
「リュウの楽譜、間違えて持って帰ってたことに気付いたから渡しにきたの」

困るでしょ、と崎本が笑う。
渡されたのは十二月末に行われるクリスマスコンサートで使う楽譜だった。
すっかり無くしてしまったものだと思っていた。

「文化祭終わってばたばたしてたから全然気付かなくてさー…もう慌てちゃって」
「…ありがと」

楽譜を受け取って、はっとする。

「せ、先輩、中入ってて」

怪訝そうな崎本の視線から隠すようにえっちゃん先輩を部屋へ押し込んだ。

「彼女……先輩なの?」
「まあね。じゃ、楽譜ありがと」

そそくさと部屋へ戻ろうとすると、待って、と崎本に止められた。

「クリスマスコンサート、チケットくれないの?」

約束したでしょ?と手を出される。

「あー…ちょっと待ってて…」

何もこんなときに言わなくても、とは思うが約束は約束だ。
部屋に戻り、チケットを持ってまた玄関へと戻る。

「ありがとー」

崎本が素っ気なく言う。
ちらりと視線が部屋の奥に投げられた。

部屋に戻ると、先輩が布団の上で毛布に包まっていた。

「ごめん…あの…」
「星くんかと思って…開けちゃって…」

先輩が気まずそうに下をむいて呟いた。

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