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忘れられる、キスを
第47章 遠慮
演奏会が終わり、会場の外へ出ると、出演者を待つ人たちで入口はちょっとした混雑が起こっていた。
ポケットに入れた携帯が震え、メールの着信を知らせる。

『すぐ行くから、入口の所で待ってて』

人の少ないところによけ、星くんが出てくるのを待つ。
出演者用通路の出入り口からはまだ出てくる気配はない。
ホール内とはいえ、入口付近は空気が冷たい。
マフラーを巻き直して、カバンに入れた紙袋を確かめた。
クリスマス用にラッピングされた小さな袋の中には、甘いものが苦手な星くんでも食べられるジンジャークッキーが入っている。

もう一度、出演者用通路の出入り口に視線を戻す。
丁度、扉が開き、数人の男子学生が出てきた。
その中に星くんもいる。

「あ、リュウ!」

華やいだ声が聞こえて、一歩後ずさってしまう。
前の列に座っていた三人組が星くんを取り囲んでいた。
会話の内容までは聞こえなかったが、親しげな雰囲気だ。

また、ぎゅっと胸が締め付けられる。
嫌な感情が心を支配していく。

星くんがこちらに気づく前に、ジンジャークッキーをプレゼント受付に預け、会場を出た。

バカだなあ、私。
気にすること、ないのに。

冷たい風に、ぎゅっと身体が縮こまった。
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