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忘れられる、キスを
第47章 遠慮
『えっちゃん先輩?どこ?』

暢気な様子の星くんの声が電話口から聞こえる。
まだ人が多いのか、背後ががやがやとうるさい。

「ん、ごめん…ちょっと体調悪くて、先に、帰るね」
『え、大丈夫?』
「うん、大丈夫。大したことないから…クッキー、受付に預けたから」

ありがとう、と星くんが明るく言う。
嘘を吐いたことに、ちくりと胸が痛む。

『あ、先輩、大丈夫なら、明日、夜、ご飯行こう?』

クリスマスだし、と楽しげな声の後ろから「リュウー?なに、デート?」と甘い声が聞こえた。

「あの、年末で…忙しくて……残業になっちゃうかもしれなくて…」
『明後日でもいいけど』
「ん、ごめん…明後日も…」

そっか、と残念そうな声にまたちくりと胸が痛む。

『遅くなってもいいから、先輩の家、行ってもいい?』

甘えるような声に、思わずうなずきそうになる。

「朝、早いから…」
『俺も起きるから』
「…ごめんね」

星くんに何か言われる前に通話を切る。

本当は、星くんに会いたい。
一緒にいて、色んなことを話して、それから…

知らずにぽろりと涙がこぼれた。
気づいたら止まらなくなってしまった。

子どもじゃないんだから。
そう自分に言い聞かせても、あとからあとから涙があふれてきた。

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