この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
忘れられる、キスを
第5章 優しさ
よく考えたら、私も星くんも、昨日の夜はコーヒーとチョコ一粒しか食べていない。
私たちは、近くのファミレスに行くことにした。
二月の朝の空気が、空腹の身体に堪える。
「先輩、手、貸して」
そう言われて、答える前に、ひょいっと左手を取られる。
そしてそのままコートのポケットに突っ込まれた。
「あ、あの…」
「このくらいは、許して」
こちらを見ずに言う星くんの横顔が、昨晩の星くんとダブって私は慌てて目をそらした。
手袋をはめた星くんの手が、コートのポケットの中で私の冷たい指先を温める。
この手を握り返すべきか、私の手は迷って、結局ふらふらとされるがままになっていた。
土曜の早朝のファミレスは人も疎らだった。
星くんは席に案内されたところで、ようやく、手を離してくれた。
左手の指先がじんわり温かい。
「先輩、なに食べる?」
懐っこい笑顔で私にメニューを手渡す。
この顔。
私なんかに構わなくても、女の子には困らないんじゃないかな。
「先輩?まだ眠いの?」
急に顔を覗き込まれて、後ずさる。
余計なことを考えていたことを悟られないよう、わざと不機嫌を装う。
「も、もう決めたから…あと、卒業しても、先輩なんだから、敬語、使いなさいよ」
ジトッと睨むと、星くんはあまり悪びれもせずへらへらっと笑った。
私たちは、近くのファミレスに行くことにした。
二月の朝の空気が、空腹の身体に堪える。
「先輩、手、貸して」
そう言われて、答える前に、ひょいっと左手を取られる。
そしてそのままコートのポケットに突っ込まれた。
「あ、あの…」
「このくらいは、許して」
こちらを見ずに言う星くんの横顔が、昨晩の星くんとダブって私は慌てて目をそらした。
手袋をはめた星くんの手が、コートのポケットの中で私の冷たい指先を温める。
この手を握り返すべきか、私の手は迷って、結局ふらふらとされるがままになっていた。
土曜の早朝のファミレスは人も疎らだった。
星くんは席に案内されたところで、ようやく、手を離してくれた。
左手の指先がじんわり温かい。
「先輩、なに食べる?」
懐っこい笑顔で私にメニューを手渡す。
この顔。
私なんかに構わなくても、女の子には困らないんじゃないかな。
「先輩?まだ眠いの?」
急に顔を覗き込まれて、後ずさる。
余計なことを考えていたことを悟られないよう、わざと不機嫌を装う。
「も、もう決めたから…あと、卒業しても、先輩なんだから、敬語、使いなさいよ」
ジトッと睨むと、星くんはあまり悪びれもせずへらへらっと笑った。