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忘れられる、キスを
第48章 距離
うとうとと、浅い眠りに落ちていたところをインターホンに引き戻された。

あれ、もしかして、えっちゃん先輩…?

寝ぼけた頭のまま、慌ててドアへ向かう。

「先輩?!来てくれ…」
「悪かったわね、愛しの先輩じゃなくて」

ドアを開けた向こうには崎本がむすっとした表情で立っていた。

「…っと、悪い…何か、用?」
「……話が、あって…」

いつになく歯切れ悪く、口ごもる。
十二月の風がサンダルばきの素足に堪える。

「寒いんだけど…」
「…リュウに、言いたいことがあったの」
「言いたいこと?」

そんなのメールでいいよ、と言いかけたところでぎゅっと腕を掴まれた。

「……リュウのこと、好きなの」
「…え?」
「あの人…先輩じゃなくて、私じゃ、だめ?」

こちらをまっすぐ見つめる瞳。
思わずどきりとしてしまうほど、意志の強そうな目だ。

「………ごめん」
「何で、私じゃダメなの」
「何でって…」
「私の方が、ずっと、近くで、ずっと、長く一緒にいたのに」

ぎゅ、と腕をつかむ指先に力が入る。

「…先輩のことが、好きなんだ」

その気持ちはどうしようもなくて。
どう言えばいいのか、分からない。

「崎本は、友達だから…今までも…これからも…」

ズルい言い方、だ。
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