この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
忘れられる、キスを
第49章 キス
「あ、そうだ。明けましておめでとうございます」
「あ、明けましておめでとう…」
お詣りしよ、と私からボストンバッグを奪い、参道を進む。
参拝を済ませ、参道を戻り、石段を降りる。
家まで、という星くんの言葉に甘え、そのまま荷物を持ってもらうことにした。
歩きながら、私は何を話すべきか、考えあぐねていた。
星くんも、何も喋らない。
そうこうしている間に、家に着いてしまった。
「はい、じゃあ、俺は帰るね」
「え、あの…」
てっきりそのまま上がっていくのかと思っていたので、慌ててしまう。
「帰る、の…?」
「ん、帰る」
そっと離された手が寂しい。
荷物を持ってもらったお礼も口から出てこない。
「あ、そうだ」
帰りかけた星くんがくるりと振り向き、私の鼻先にすっと一枚の紙切れを差し出した。
「これ、二月の定期演奏会のチケット。絶対、来て?」
ぐっと真正面から見つめられる。
有無を言わさないその目力にこくりと頷いてしまう。
「先輩に…えっちゃん先輩に、伝えたいこと、あるんだ。でも、言葉じゃきっと、伝わらないから…」
だから、と言葉を切る。
「えっちゃん先輩のためだけに、弾くから」
それだけ言うと、くるりと背を向け、帰ってしまった。
「あ、明けましておめでとう…」
お詣りしよ、と私からボストンバッグを奪い、参道を進む。
参拝を済ませ、参道を戻り、石段を降りる。
家まで、という星くんの言葉に甘え、そのまま荷物を持ってもらうことにした。
歩きながら、私は何を話すべきか、考えあぐねていた。
星くんも、何も喋らない。
そうこうしている間に、家に着いてしまった。
「はい、じゃあ、俺は帰るね」
「え、あの…」
てっきりそのまま上がっていくのかと思っていたので、慌ててしまう。
「帰る、の…?」
「ん、帰る」
そっと離された手が寂しい。
荷物を持ってもらったお礼も口から出てこない。
「あ、そうだ」
帰りかけた星くんがくるりと振り向き、私の鼻先にすっと一枚の紙切れを差し出した。
「これ、二月の定期演奏会のチケット。絶対、来て?」
ぐっと真正面から見つめられる。
有無を言わさないその目力にこくりと頷いてしまう。
「先輩に…えっちゃん先輩に、伝えたいこと、あるんだ。でも、言葉じゃきっと、伝わらないから…」
だから、と言葉を切る。
「えっちゃん先輩のためだけに、弾くから」
それだけ言うと、くるりと背を向け、帰ってしまった。