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忘れられる、キスを
第6章 我慢
シャワーを浴びて、着替えるといくらか気持ちが落ち着いた。
部屋に戻って、えっちゃん先輩の置いていったチョコレートの箱を開ける。
それほど甘いものは好きではない。
しかも、これは先輩が、大好きな倉田先輩を想って選んだもの。
一粒食べると、またふつふつと苛立ちが湧いてきた。

俺の方が、ずっと、先輩のこと想ってるのに。

こんなことなら、ぐずぐず言い訳してないで、先輩が卒業する前にでも一回アタックしてみるべきだった。
断られただろうけど。
少なくとも、弱ったところに漬け込んで…とは思われなかったかもしれない。
もう少し、俺の気持ちを信用してくれたかもしれない。

言い様のない後悔がぐるぐると頭を巡る。

ああ、もう。
ぐるぐるしててもどうしようもないのに。

俺はコーヒーを淹れようと立ち上がった。
ふと、携帯の着信音がなる。
メールか?

『昨日は色々お世話になりました。パジャマは今度行ったときに洗うから、そのまま置いておいて下さい』

絵文字も顔文字もない、素っ気ないメッセージ。

パジャマは今度行ったときに洗う…ってまた来てくれんの…?
どんだけ気にしてるんだよ。
俺が変なことに使うと思った?
まあ、使ったけど…

『気にしないで、また遊びに来てください!あ、パジャマとパンツはもう洗っちゃいました。次来たときも使えるようにしまっておきますね。今度はちゃんと夜ご飯いきましょ。また連絡します!』

きっと、眉尻下げて、ちょっと困った顔であわあわするだろうな…
メールを受け取った先輩を想像して、また頬が緩んだ。


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