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忘れられる、キスを
第6章 我慢
それから、数日後。
俺は窮地に立たされていた。

ゾクゾクと身体をはしる寒気。
ガンガンと脳を揺さぶる頭痛。
そして、極め付けに数時間毎に俺の腹を襲うビックウェーブ。

風邪っぽいなーとは思っていたけど、まさか突然こんな重症化するとは。
俺はなんとかバイト先に電話し、事情を説明した。
店長は「腹出して寝てたんじゃねーの?」と笑った。
実際は腹どころじゃないけど。
多分、一番の原因はあれ。
先輩が帰った日のあとの、ナニ。

行為そのものじゃなくて、そのあとうっかり片付けもせずに半裸で寝たのが良くなかった…と、思う。

身体がだるく、立って歩くのもトイレまでがやっと。
近くの病院までは自転車で二十分ほど。
タクシー…も考えたが、車内で腹のビックウェーブに襲われたら…と思うと踏ん切りがつかない。

体温計は三十九度を示している。
久々だよ、こんな高熱。
こういう時、一人暮らしは辛い。
実家が近所なら電話もできるが、あいにく、俺の実家まではここから飛行機で二時間程かかる。
かと言って、友達を呼ぼうにも、就活中の大事な時期に移してしまうリスクがある。

割とここまで大きな病気一つなくやってきたから、常備薬もない。
水分を取らなきゃだけど、一度ベッドに戻ると冷蔵庫まで行くのが億劫になる。

せめて、誰か一人…

そう思って、携帯に手を伸ばす。

そうだ、今なら…風邪なら……来てくれる…?

朦朧とする意識の中で、ある番号を呼び出した。






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