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忘れられる、キスを
第53章 ふたりぐらし
湯量を最大にして最短で湯船にお湯を張る。

「絵津子さん、お風呂、入ろう?」

先に脱衣所に押し込んで、しばらく待つ。
シャワーの音が止まり、静かになる。

「……入るよ?」
「えっ、い、いっしょに…?!」

慌てたような声を無視して扉を開ける。
温かなお湯とシャンプーの甘い香りがふわりと鼻腔をくすぐった。
先輩は洗い場に背を向け、湯船の中で膝を抱えている。

「何してんの?」
「……あ、あんまり、みっ…見ないで…」

今更な話だ。

「ね、もう、入っていい?」

声をかけると、先輩が無言で端に寄ってスペースを空けてくれた。
さすがに賃貸の湯船は、大人二人で入るようには出来ておらず、ちょっと窮屈だ。

「絵津子さん、ここ、座って」

俺が伸ばした足の上に先輩を座らせる。
後ろから抱き抱えるようにすると収まりが良い。

「ほ、ほしく…な、なんか当たって…る……」
「そりゃ、可愛い絵津子さんのお尻が乗っかるから…」

その前の脱衣所での行為もさめやらぬまま…となれば、反応してしまうのは正常だと思って欲しい。

「………えっち」

その言い方の方がエッチじゃん。
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