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忘れられる、キスを
第1章 バレンタインデー
先輩との関係は、卒業する前も後も変わらなかった。

同じサークルの、先輩と後輩。
少しだけ、仲が良くて、他の人より、よく話す。

ただ、それだけ。

卒業してから、ごくたまに食事に行った。
先輩から誘われたり、私から誘ったり。

けれどもその頻度もだんだんと少なくなっていった。
先輩の仕事が忙しくなっていったからだ。

何度となく、気持ちを伝えようとした。
けれど、仕事に打ち込み、忙しそうな先輩を見るたび、私の存在が重くなってしまうのでは…と尻込みしていた。

そんなのは、単なる逃げの口実。
本当は、この関係を壊すのが怖かったから。

告白のチャンスなんて、在学中にいくらでもあった。
でも、断られて、今までより距離が離れてしまったら…?
そう考えると、言い出せずにいた。

そして、ずるずるとした気持ちを引きずり、今日まできてしまった。

私も卒業して、2年。
先輩に会って、きっとそのときから好きだったから、かれこれ6年は片想い。

我ながら気の長い話だ。

周りはどんどん彼氏をつくり、デートだの旅行だのと楽しみ、そろそろ結婚…なんて話もあったりなかったり。

なのに私は何をぐずぐすやっているのだろう。
待ってるだけじゃ、だめなんだ。
たとえ、だめでも。せめて、この気持ちにケリをつけよう。

そう思って、勇気を振り絞って、メールした。

なのに、この仕打ち。

別に、先輩は悪くない。
彼女でもなんでもないんだから、文句を言う筋合いもない。
だけど、もう少し、私のこと考えてくれていたって、いいんじゃないかな。

仲の良い後輩、でしょ。
もう少しだけ、私のこと思ってくれてもいいんじゃない?

そんなの、欲張りなんだってわかってるけど。

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