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忘れられる、キスを
第7章 風邪
小一時間経ったので、そろそろ起こして水分を摂らせないと、と思い、星くんの額に手を当てる。

んっ、と小さく身じろいで、瞼が震えた。

「星くん、起きた…?大丈夫…?」

顔を覗き込み、声をかける。
最初こそ、ぼんやりしていた星くんだったが、私に気付くとがばりと起き上がり、目をしぱしぱさせる。
どうやら、自分が電話したことも、部屋の扉を開けたこともさっぱり覚えていないようだ。

すみません…と小さくなる星くんが、何だか小さな子どものようで、少し可愛い。

背中に触れると汗でびっしょりと濡れていた。

「身体拭いて、着替えて、水分摂ろう」

私の言葉に星くんがこくり、と頷く。
冷蔵庫からスポーツドリンクを出して戻ると、星くんは上半身裸で、着替えているところだった。

「わ、ご、ごめんね」

驚いて、思わず後ろを向く。

「ん、いいよ」

短く言って、

「あ、パンツも替えるから、ちょっと、そっち向いてて…」

ごそごそとタンスを開ける音がする。

何でこんなことになってるの…
私の背後で男の子が着替えてる。
そりゃ、着替えろって言ったのは私だけど、下着替えるなら、トイレ行くとか…配慮ってものが…

私が悶々としていると、星くんが、いいよーと声をかけた。



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