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忘れられる、キスを
第7章 風邪
「はい、じゃあ、ちゃんと水分摂って。それ飲んだら、熱測って。病院は行った?ご飯、食べたいものある?」

矢継ぎ早に質問すると、星くんが眉間にシワを寄せた。

「病院…行ってない……」
「な、なんで?!」
「身体、動かなくて…」

少し寝て、着替えて、水分を摂ったからか、最初に見たときよりは気分が良さそうだ。
それでも、病院に行けないほどの体調の悪さとは、心配だ。
私も一人暮らしの経験は長いが、ここまで酷い風邪を引いたことはない。
ただでさえ、一人暮らしの時の病気は堪えるのに。
きっと、心細かったんだろうな。

そう思って、再び横になった星くんの額を撫でる。

「あ、それ、きもちいいー…」

へへへ、と笑みを浮かべる。
私はその額に、二枚目の熱冷ましシートを貼り付けた。

「なんか、食べたいものとか、ある?」
「んー…あんまり…」
「ゼリーとか、プリンとか、買ってくるよ?おかゆくらいなら、冷蔵庫の残りでも作れるし」
「んー…」

熱で顔を火照らせた星くんが、とろん、とした目でこちらをみる。

「俺、えっちゃん先輩いれば…いい……」

そう呟いて、気付けば星くんは私の左手をきゅっと握っていた。

「えっちゃん…せんぱ……ちゅ…して………」

星くんは掠れ声で私を呼んで、また眠りへと落ちてしまった。


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