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忘れられる、キスを
第8章 約束
『具合、どうですか。六時半頃着きます。何か食べたいものとかあったら、連絡下さい』

えっちゃん先輩のメールに嬉しくなる。
ちゃんと、昨日の約束守ってくれるんだ。

『おかげさまでだいぶよくなりました!また、昨日のお粥食べたいです!』

まだ本調子でもなく、何も食べる気は起きなかったが、あのお粥は、もう少し食べたかった。
できれば、今度こそ出来たてを。

それから先輩がくるまで、何日も入っていなかった風呂に入って、熱冷ましのシートを貼り替え、また、布団に潜り込んだ。
まだ、体温計は三十七度台後半の数値を示していたが、それでも昨日と比べると本当に楽になった。

毛布にくるまって、うつらうつらしていると、玄関のチャイムが鳴った。

「先輩!おかえりなさい!!」

嬉しくなって扉を開けると、戸惑った顔の先輩が立っていた。

「た、ただいま…?」

元気そうね?と先輩が俺の頬に手を当てる。
ひんやり、冷たくて心地よい。

先輩は荷物を置くと、早速、お粥を作ってくれた。

卵と醤油だけ。
今日は、先輩の買って来てくれた鰹節も入っている。
ふわっといい香りが鼻腔をくすぐる。

「どう?」
「ふっ…う…まい…です」

先輩は、食べながらしゃべらないの、といいながらにっこり笑った。




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