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忘れられる、キスを
第9章 痕跡
家に戻っても、星くんからの連絡は無かった。

コートを掛けて、鞄を置き、ベッドに沈み込む。
どっと眠気が押し寄せてきた。

昨日の夜は数時間ごとに目が覚めた。
なかなか熱の下がらない星くんが心配だった。
顔まわりの汗を拭いたり、熱冷ましのシートを交換したりして、出来る限りのことをした。

起きるたびに星くんの腕から何とか抜け出していたが、ベッドに戻るたびに、あっけなく捕まってしまった。

そんなこんなであまり寝付けなかったのに。
病院の待合室でうとうとしてたらキスされるし。
なに考えてるんだろ、ほんとに…

部屋着に着替えようとして、はっとする。
ベッドの足元に置いた全身鏡に映る私。
鎖骨の上、胸の間、おへその回り。
至る所に、星くんの付けた紅い痕がある。

あいつめ…
なんもしないって言ったのに。

その痕は、先ほどまでの行為を思い起こさせるには十分だった。
カッと、顔が熱くなる。

トイレに行く直前、星くんは胸の下着に手をかけていた。
もし、あのまま続いていたら…
バレンタインデーのときのことを思い出す。

あの時は、胸に触って、それだけじゃなくて、乳首も…

冬なのに、身体が火照る。
お腹の下の方が、きゅっ…として、なんだかムズムズする。
なんだろう、この変な感じ…



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