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忘れられる、キスを
第10章 マフラー
誰かをひたすらに想うというのは、こんなに辛く、苦しいことなのか。

えっちゃん先輩も…倉田先輩のことこんな風に想って、苦しんでるの…?

そう思うと、余計苦しさが増す。

俺にすれば、苦しさから解放してあげられるのに。
俺が、忘れられるように、するのに。
いっぱいキスして、抱きしめて、身体中に俺の印を付けて、気絶するくらい気持ち良くしてあげるのに。
何もかも、どうでもよくなるくらい。

先輩は、苦しいとき、どうしてる?
自分で慰める?

切ない顔で、自身を慰め、その甘い痺れに身体を震わす先輩を想像する。

『あっ…んんっ……や……ふ…っく…』

妄想の中で、先輩が身体を弓なりに反らせ、艶めいた声を漏らす。

『せんぱ…くら、たせん…ぱ…っあ…い……』

あ。
だめだ。

えっちゃん先輩が倉田先輩を想ってするとこ、なんて想像したって余計苦しいだけじゃないか。

堪らずに、俺を想って自分を慰める先輩、を夢想してみるがどうにもしっくりこない。

妄想の中でさえ手に入らないもどかしさに、胸がつまる。

ただ、勃ち上がってしまった自身はなかなか治まらず、結局、先輩の残り香を其処へあてがい、そのまま扱くという変態極まりない行為に走ってしまった。

ふと我に返って、再び地の底まで落ち込んだのは言うまでもない。




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