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忘れられる、キスを
第10章 マフラー
先輩から音沙汰のないまま、二月がおわってしまった。
俺はバイトと就活で思っていたよりばたばたとした毎日を送り、三月もあっという間に過ぎ去ろうとしていた。
季節は春、といえどもまだまだ肌寒い日が続いていた。今年は桜の開花も例年より遅いらしい。
俺は、先輩から「借りた」マフラーをまだ時々巻いていた。
返せという連絡はなかったし、こうして身につけていれば、偶然会った時にすぐ返せるし、と自分に言い訳をして。
不思議なことに、先輩のマフラーを身につけて向かう先々での就職に向けての試験は連戦連勝で、ゲンを担いで、暖かくなって来てからもこっそり持ち歩いていた。
四月に入り、面接試験も本格的に始まった。
先輩のマフラーのお陰か、俺は順調に駒を進めていた。
このまま上手くいけば、五月の上旬にはひと段落するはずだ。
そしたら、先輩に連絡しよう。
いいとこに就職したら、少しは倉田先輩と戦えるかもしれないし。
かなり不純な動機だったが、先輩が絡むと俺はかなりやる気になるらしい。
自分でも驚くほどに就活は上手く進んでいった。
相変わらず、先輩からの連絡はなかったが、それが逆に自分のことだけに集中出来る環境を作っていたのかもしれない。
時々、先輩のことを夢想しつつ、将来に向けての準備を着々と進めていった。
俺はバイトと就活で思っていたよりばたばたとした毎日を送り、三月もあっという間に過ぎ去ろうとしていた。
季節は春、といえどもまだまだ肌寒い日が続いていた。今年は桜の開花も例年より遅いらしい。
俺は、先輩から「借りた」マフラーをまだ時々巻いていた。
返せという連絡はなかったし、こうして身につけていれば、偶然会った時にすぐ返せるし、と自分に言い訳をして。
不思議なことに、先輩のマフラーを身につけて向かう先々での就職に向けての試験は連戦連勝で、ゲンを担いで、暖かくなって来てからもこっそり持ち歩いていた。
四月に入り、面接試験も本格的に始まった。
先輩のマフラーのお陰か、俺は順調に駒を進めていた。
このまま上手くいけば、五月の上旬にはひと段落するはずだ。
そしたら、先輩に連絡しよう。
いいとこに就職したら、少しは倉田先輩と戦えるかもしれないし。
かなり不純な動機だったが、先輩が絡むと俺はかなりやる気になるらしい。
自分でも驚くほどに就活は上手く進んでいった。
相変わらず、先輩からの連絡はなかったが、それが逆に自分のことだけに集中出来る環境を作っていたのかもしれない。
時々、先輩のことを夢想しつつ、将来に向けての準備を着々と進めていった。