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恋花火
第25章 迷子の森
鬼練習、二日目。


昨日こなしたメニューがキツく、まだ疲れが抜けていない部員たち。


今日は監督が遅れてくるため、ミーティングは陸先輩が進める。


……あれ?


陸先輩の声が、少しおかしい。


ひょっとして風邪…?


もしかして、もしかしなくても一昨日寒い中薄着でいたせい…?


心なしか目もウルウルしている気がする。


ミーティングを終えると、怠そうにしてベンチに腰をかけていた。


けれどいざ練習がスタートすると、そんなこと感じさせない動きで。


一番辛いのは陸先輩なんじゃないの?


監督やコーチに一番先に怒られるのもキャプテンで


なのにミスした部員たちにはきちんとケアしてる。





……もう。陸先輩。


ズルいくらいに魅力的だよ……


"弱みにつけこんでるから、俺はズルい"


先輩はよくそう言っていたね


私は、その優しさに逃げていた。





"本当に好きな人のところに行っていいからね"


本当に好きな人って


陸先輩しかいないんですけど。




"菜月ちゃんが好きなの"


動揺こそしたけれど、茜先輩の気持ちを知れたことは嬉しかった。


だって大好きな茜先輩だから


あの日


一瞬だけ触れた唇は震えていた


気持ちを伝えることに、どれだけの勇気がいったのか。



"菜月が泣いてる方がやだ。"


全てを知っていたのに、見守っていてくれたタケル。


陸先輩の優しさに逃げた私の泣き言を聞いてくれて


抱きしめてくれて







……なのに私はいつも逃げてばかり


向き合うこともせず


本当に酷くてズルいのは


この私。

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