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恋花火
第26章 ねぎみそ 愛の劇場
陸先輩……やっぱり声がいつもと違う。


なのに、おまえら疲れてないかとか


ちゃんと朝飯食ったかとか


もう、本当


素敵お兄ちゃん……






「あっ、陸先輩!これ!」


電車を降りるときに、タケルが陸先輩にある物を渡した。


「ん?あめ?栄養ドリンク?」

「えっと、先輩ちょっと風邪気味?とか思いまして…」


そう言いながら、タケルがチラッと私を見た。


「うわー、マジかー、ありがとー」


陸先輩がタケルから受け取って、満面の笑みを浮かべた。


わ……なんて可愛い笑顔……


陸先輩はニッコニコでタケルにありがとうと礼を言っていた。


「じゃー部活で。授業中寝るなよ!」


私とタケルは、そんな爽やかな陸先輩の後ろ姿を見つめていた。


「陸先輩…、めっちゃ嬉しそうだったな。」

「うん……」

「菜月が渡してれば、あのスマイル菜月に向けられてたのに。」


おまえ惜しいことしたなって、タケルは笑ってた。


「陸先輩ねぎみそ持ってっちゃったね…」

「あ!やべぇ!」

「やべぇってなに。あんたあんだけ勧めておいて。」

「俺も飲みたかったのに…!」

「なんだそんなの。うちに来ておじいちゃんに作ってもらえばいいじゃん。」

「や……、うん、いや〜、うん…」


なんだか煮え切らないタケルの態度。


「……菜月」

「ん〜?」

「おまえさ、陸先輩となんか変な感じになってるけどいいの?」

「…よくない。けど、茜先輩のことを思えば…」

「茜先輩の気持ちとか言ってるけど、おまえ結局自分が悪者になりたくないだけじゃん。」

「は?」

「陸先輩は、悪者になってもいいくらいおまえのこと好きだったんだよ。茜先輩だってそう。バカなことしてでも…」

「私が悪いって言いたいの?」

「だからー、そうじゃなくて」


なんでわかんねんだよ


そうタケルは呟いた。


私に対して、ものすごく苛立っているのが伝わってくる。


「菜月はただ、逃げてるだけだろ」


人は図星を指されるとムキになるって聞くけど


本当にそうかもしれない。


心の奥を見抜かれた私は、


そんなタケルに対して、ただ怒りをぶつけることしか、出来なかった。
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