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恋花火
第33章 All the best
そして、試合開始15分前。


スタンドの裏で、選手たちはスパイクの紐を結び直したり、ピョンピョン跳ねたりしている。


多かれ少なかれ、スポーツをする者にはルーティンというものがある。


集中力を高めたり、ゲンを担いだりするための行為をさすのだけれど


タケルにとってそれは、私とのハグだった。


極度のあがり症であるタケルは、試合前は緊張がピークに達していた。


それをおさえるため、集中するために、タケルは決まって私を抱きしめて……時には、キスを交わすことだってあった。


けれど今日はそれをしない。


……出来ない。


今まで、例えタケルに恋人がいたとしても


ルーティンとして欠かしたことはなかった。


けれど今は私に恋人がいるから、しない。


陸先輩はひとり輪から外れ、壁に寄りかかって宙を見つめていた。


このシーンは今までにも見たことがある。


陸先輩は試合前にはこうして気持ちを集中させている。


ピーーーーー


試合開始のホイッスルが鳴った。


ふと客席に、二川原さんを発見した。


両手を合わせ、祈るように見つめる先にはタケルがいた。


……タケル


最近あんたモテてるらしいじゃん。


一年生女子のナンバーワンに狙われてるなんて、ちょっとすごいんじゃないの?


栗林談だから、本当かどうか怪しいけど……


タケルは口が悪いけど、実は優しいし


気分屋だけど、面白いから……


きっと素敵な恋人が見つかるよ……


「大石いいな。」


って、監督とコーチが試合を見て話している。


タケルは、どこまでのぼりつめるのかなぁ。


一年からこの高校でスタメン起用されて、しかも監督に褒められるなんて……


そして、0-0のまま前半終了。


監督から選手たちには、このままのペースでいけとアドバイスがあった。

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