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恋花火
第42章 ナミダボシ
「俺、そのやり取り実は聞いちゃってて。」

「嘘!恥ずかしい!!」


まさか


あの時のやり取りを陸先輩に聞かれていたとは……!


赤っ恥!!


「……素直に、羨ましいって思った。」

「不幸の手紙がですか…!?」

「違くて。笑 自分のことのように泣いたり、怒ったりしてくれる女の子が側にいて、タケルが羨ましいと思ったよ。…足も速いしね。」


羨ましいなんて、そんな大げさなものじゃないよ


私はタケルが悲しいのがただただ嫌で


笑っていてほしくて


辛いこと、苦しいことを全部受け止めたくて……




「……だからタケルと菜月ちゃんとチームメイトとして過ごす毎日が、夢みたいだった。あれ、これ夢?」

「……夢じゃないですよ。笑」


そう言うと陸先輩は笑って、私の頬をそっと撫でた。


「俺も今、思ってる。」


私は自分の目が潤んでいるのがわかった。


これは寒さのせい?それとも……


「菜月ちゃんの辛いことも、苦しいことも、全部一緒に抱えていきたい。」


静かに重なった唇


私は、陸先輩の事も手離せない


本当にズルい


"タケル君のことも、相原先輩のこともどっちも好きなんだよ"


二川原さんの言葉が脳裏をよぎる。


……その通りだよ


私はどっちも好きだ。


……だから、どちらも選ばない。


選べない。








「陸先輩、ごめんなさい。」


こんなに優しい人は、もうきっと、現れないだろう。


「私と別れてください____ 」


こんな選択しか出来ない私を


どうか、怒ってください。


嫌いになってください。


そう


冬の空に願います。
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