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恋花火
第43章 春の海、冬の海

だけどあの頃より、私たちは大人になった。
「こうしてよく海来るの?」
「結構来る。」
「……そうなんだ。」
タケルはいつしか、私を海へと連れ出さなくなった。
……それはきっと、私に恋人がいるから。
タケルは自分に恋人がいようがいまいが、私とよく海に行っていたのに。
海を眺めるタケルの横顔を眺める。
……前よりもずっと大人に近づいたその横顔を見ていたら
なんだかタケルが急に遠くに感じた。
それは高校辞めるからとか、東京行くとかそういうんじゃなくて
なんだろう
今にもフッと消えてしまうんじゃないかってくらい
儚く見えた。
「……見過ぎ。キモい。」
「はいすみません。いたっ!」
デコピンされた。
「渾身デコピン。」
「手加減しようよ。」
「わりー。デコ赤くなってる。笑」
「わっ!やめてよー!傷物じゃん!」
「大丈夫だって。陸先輩は傷物でも嫁にしてくれると思うよ。」
そう言って、タケルはあははって笑った。
確かめるなら今しかないと
私はあのことを切り出した。
「……ねぇ、タケルさ、亜美としてなかったんだね……」
タケルは一瞬ギクリとした表情をして
そのあと、罰が悪そうに唇をかんだ。
……あ。
この仕草、私が好きだったやつだ。
言い返せない時とか、嘘がつけないときに
タケルはこの仕草をする。
「……してない。」
「すごいよね。私全然気付かなかった。まさかタケルも初めてだったなんて。」
「俺もすごいと思う。」
「自分ですごいとか言っちゃってるし。笑」
「だってそうじゃん。それまでは勃たなかったのにさ……」
「へ?た、勃たなかったって、あれ、あれがですか…?」
「それ以外になにがあんの?」
「ないですよね……」
「バーカ」
タケルも私と同じだったなんて
私がタケルじゃなきゃ濡れなかったように
タケルは私じゃなきゃ……
「やめよ。この話。」
「え、なんで!?」
「なんかムラムラしてくる。俺も男ですから〜」
タケルは立ち上がり、テトラポットの上を歩き始めた。
「こうしてよく海来るの?」
「結構来る。」
「……そうなんだ。」
タケルはいつしか、私を海へと連れ出さなくなった。
……それはきっと、私に恋人がいるから。
タケルは自分に恋人がいようがいまいが、私とよく海に行っていたのに。
海を眺めるタケルの横顔を眺める。
……前よりもずっと大人に近づいたその横顔を見ていたら
なんだかタケルが急に遠くに感じた。
それは高校辞めるからとか、東京行くとかそういうんじゃなくて
なんだろう
今にもフッと消えてしまうんじゃないかってくらい
儚く見えた。
「……見過ぎ。キモい。」
「はいすみません。いたっ!」
デコピンされた。
「渾身デコピン。」
「手加減しようよ。」
「わりー。デコ赤くなってる。笑」
「わっ!やめてよー!傷物じゃん!」
「大丈夫だって。陸先輩は傷物でも嫁にしてくれると思うよ。」
そう言って、タケルはあははって笑った。
確かめるなら今しかないと
私はあのことを切り出した。
「……ねぇ、タケルさ、亜美としてなかったんだね……」
タケルは一瞬ギクリとした表情をして
そのあと、罰が悪そうに唇をかんだ。
……あ。
この仕草、私が好きだったやつだ。
言い返せない時とか、嘘がつけないときに
タケルはこの仕草をする。
「……してない。」
「すごいよね。私全然気付かなかった。まさかタケルも初めてだったなんて。」
「俺もすごいと思う。」
「自分ですごいとか言っちゃってるし。笑」
「だってそうじゃん。それまでは勃たなかったのにさ……」
「へ?た、勃たなかったって、あれ、あれがですか…?」
「それ以外になにがあんの?」
「ないですよね……」
「バーカ」
タケルも私と同じだったなんて
私がタケルじゃなきゃ濡れなかったように
タケルは私じゃなきゃ……
「やめよ。この話。」
「え、なんで!?」
「なんかムラムラしてくる。俺も男ですから〜」
タケルは立ち上がり、テトラポットの上を歩き始めた。

