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恋花火
第45章 brothers
その翌日
陸先輩の従兄弟さんが、グラウンドに登場した。
「また来たのかよ……」
項垂れる陸先輩に従兄弟さんは、「今日は菜月ちゃんに用があって。」そう告げた。
ドクンと心臓が跳ねる。
……なにを言われるんだろう。
大体想像がつく。
タケルの事を忘れられぬまま陸先輩の優しさに逃げ、甘える私のことをきっと叱咤するのだろう。
私は覚悟を決め、従兄弟さんの待つ方へ足を進めた。
「ごめんねー」
優しい表情に、口調。
陸先輩と兄弟だと知ってから、ますます二人は似ているように見えた。
「……俺、自分の名前紹介すんの忘れてたわ。」
従兄弟さん_____彼は、自分の名前は郁だと紹介してくれた。
「男らしくない名前だろ?親父がつけてくれた名前。陸と郁……よく似てる。」
私はなんて返したらいいかわからず、少し困った。
すると郁さんは、フッと笑った。
「……あいつ、優しいだろ。」
郁さんの目線の先には、ランニング中の陸先輩がいた。
「……優しいです、とっても。」
「だろうね。俺にも優しいから、あいつは。」
郁さんは寂しそうに、でもとても愛しい眼差しで陸先輩を見ている。
「俺、ずっと自分の存在が嫌で嫌でたまらなかった。だって愛人の子だよ?……ありえねーよ。」
郁さんがこれまでどんな人生を歩んできたのか、私は知らない。
けれど辛い経験を幾度もしたのだろうという事は、表情から伝わってきた。
「……だけど、ある日あいつと連絡を取り合うようになってから俺の人生は変わった。」
「陸先輩とですか?」
「…そう。陸は言ってくれたね。兄が欲しかったから嬉しい、ってね。」
そして郁さんは、私の方に向き合って一言述べた。
「……俺はあいつが可愛くて仕方ない。……傷つけたら、許さないからね?」
郁さんは、陸先輩に似た表情で微笑んだ。
……私は、なにを呑気にここまでやってきたのか。
わかっていなかった、何も。
陸先輩のことも、何も……
今にもこぼれ落ちそうになる涙を必死に堪えた。
私に泣く資格なんか、1ミリもない。
陸先輩の従兄弟さんが、グラウンドに登場した。
「また来たのかよ……」
項垂れる陸先輩に従兄弟さんは、「今日は菜月ちゃんに用があって。」そう告げた。
ドクンと心臓が跳ねる。
……なにを言われるんだろう。
大体想像がつく。
タケルの事を忘れられぬまま陸先輩の優しさに逃げ、甘える私のことをきっと叱咤するのだろう。
私は覚悟を決め、従兄弟さんの待つ方へ足を進めた。
「ごめんねー」
優しい表情に、口調。
陸先輩と兄弟だと知ってから、ますます二人は似ているように見えた。
「……俺、自分の名前紹介すんの忘れてたわ。」
従兄弟さん_____彼は、自分の名前は郁だと紹介してくれた。
「男らしくない名前だろ?親父がつけてくれた名前。陸と郁……よく似てる。」
私はなんて返したらいいかわからず、少し困った。
すると郁さんは、フッと笑った。
「……あいつ、優しいだろ。」
郁さんの目線の先には、ランニング中の陸先輩がいた。
「……優しいです、とっても。」
「だろうね。俺にも優しいから、あいつは。」
郁さんは寂しそうに、でもとても愛しい眼差しで陸先輩を見ている。
「俺、ずっと自分の存在が嫌で嫌でたまらなかった。だって愛人の子だよ?……ありえねーよ。」
郁さんがこれまでどんな人生を歩んできたのか、私は知らない。
けれど辛い経験を幾度もしたのだろうという事は、表情から伝わってきた。
「……だけど、ある日あいつと連絡を取り合うようになってから俺の人生は変わった。」
「陸先輩とですか?」
「…そう。陸は言ってくれたね。兄が欲しかったから嬉しい、ってね。」
そして郁さんは、私の方に向き合って一言述べた。
「……俺はあいつが可愛くて仕方ない。……傷つけたら、許さないからね?」
郁さんは、陸先輩に似た表情で微笑んだ。
……私は、なにを呑気にここまでやってきたのか。
わかっていなかった、何も。
陸先輩のことも、何も……
今にもこぼれ落ちそうになる涙を必死に堪えた。
私に泣く資格なんか、1ミリもない。