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恋花火
第45章 brothers
「…あ、あともうひとつ。」


その場を去ろうとしていた郁さんは振り返り、再び歩を私に向けた。


「俺はお前みたいな女、大嫌いだけどね。」


耳元でそう囁かれ、ククッと笑い郁さんは私に背を向け歩き出した。


陸先輩と同じような声で、仕草で


私に大嫌いだと、言った。


今まで他人と喧嘩したり、揉めたりすることはあっても、ここまであからさまに態度に出されたのは初めてだ。


もちろん、ハッキリと言葉にされたのも初めての事。


"大嫌い"


……私はいつの日か、陸先輩にも愛想を尽かされそう言われるんだろう。


……そして


タケルはもうすぐここからいなくなる。


幼馴染という、特別な間柄ですらなくなる私たち。


みんな離れて行く


私から


これは運命なんだ。


だって、一番そばにいるはずのお父さんお母さんもいない


きっと私はいつか一人になる。


それは神様が決めた、私の運命なのだから。







「菜月ちゃん?」


陸先輩に顔を覗き込まれ、思わずウワッと声が出た。


「ウワッて。笑」

「ごめんなさい……、考え事してて。」


部活中だというのに、私はまた集中出来ていなかった。


「……昨日のこと、ビックリしたよね。」

「え?あぁ……」


失礼ながら、陸先輩と郁さんが兄弟だという事はさほど驚きはしなかった。


だって、二人はよく似てる。


「郁は口は悪いけど、いい奴なんだ。」


陸先輩はニコッと微笑みそう言った。


……わかるよ。


郁さんは陸先輩の事をとても大切にする、いい人だという事。


そして私は


陸先輩を大切に出来ていない


卑怯で汚くて


最低な人間。





「えっ、どうしたの?」

「え……?」


無意識に瞳からハラハラと落ちて行く涙。


この涙は何を意味するものなのか


自分でもわからない。





「なんか辛い事あった?」


陸先輩は、優しい。


とても優しい。


こんな私にはもったいないくらい。


……郁さん


むしろ私は陸先輩のそばにいてはいけない人間だと思いませんか?


今度会ったら、そう聞いてみようと思う。




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