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恋花火
第6章 シーサイドにて
茜先輩の言いつけ通り、しばらく休むことにした。


医務室の窓からは、生ぬるい風が吹いてきている。


茜先輩が額に冷たいタオルをのせてくれたので、とても気持ちがいい。


パタンと静かにドアが閉まる音がして、茜先輩は部屋から出て行ったみたい。


目を瞑ると、もう睡魔はすぐそこまで来ていて…。



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「…無理っす。」


遠い方から、タケルの声がする…


「本当に無理なんで、いくら茜先輩でも。すんません。」


茜先輩もいるの…?



恐る恐る目を開けるけど、見渡しても、医務室に二人の姿はなかった。


…気のせい?


しばらくすると、医務室に今度こそ本物のタケルが来た。


「起きてて大丈夫なん?」

「うん。おなかすいた。」

「食いしん坊か。笑」

「ねぇ、今茜先輩いなかった?」

「いないけど。」


やっぱり気のせいかな?それともただの夢かも…


「…ありがとな。」


急にタケルに礼を言われ、なんのことやらサッパリわからない。


「ありがとうってなにが?」

「俺が無理言っておまえをサッカー部に入れたから…だけどマネージャーの仕事頑張ってくれてありがとって話。」


キッカケはタケルに誘われたからだけど、今はね


マネージャーの仕事、楽しいよ。


タケルにクシャッと頭を撫でられると、それはご褒美に感じられた。


まるで飼い犬がご主人様に褒められているような、そんな感じ。


「もうすぐ大きな大会あるから、怪我しないでね。」

「おー。」

「見てるからね、ちゃんと。」

「よろしく。」


私は昔からタケルの試合を見てきた。


ほぼ皆勤賞と言ってもいいくらい、毎回見に行っていた。


今まではただの観客として見に行っていたけれど、今は違う。


マネージャーとして、チームメイトとして、共に戦う。


タケル、好きだよ


今にも口からこぼれちゃいそうな言葉を飲み込む。


だってその言葉を口にしたら、"幼なじみ"という特別なポジションを失ってしまいそうで怖い。


けれど、"幼なじみ"としてではなくて


"特別な女の子"としてみて欲しい自分もいて…。
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