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恋花火
第46章 繋いだ手
そんなムードのない私たちだけど、キスをすると苦しくなる胸。


自分でも、頬が赤くなっているのがわかる。


身体の奥から火照っているような、フワフワした気持ち。


イケナイ事だと、わかっている。


けれど心のどこかで、こうなるのは必然だったと思う私もいて。


私はどうして忘れていたのだろう。


タケルを想う、この熱い想いを。


ひとつ、またひとつ唇が触れるたびに


タケルの事を、好きになってゆく気がする。


クシュンと出たくしゃみ。


それを見たタケルは、キスをするのをやめた。


……もう、終わり?


そう思ってしまう私は、救いようのない最低な女____。


タケルはそんな私の手を引いて、再び歩き出した。


向かったのは駅前。さっきも歩いた所だった。


もう帰るのか……落胆している私に、タケルはフッと笑って


「帰る?」そう問いかけてきた。


……ズルい。私の気持ちをわかっていて、そんな事を聞くなんて。


私が帰ると言うはずない事を知っているくせに。


「……帰りたくない。帰らない。」


私はこの言葉を口にした瞬間____いや、タケルと唇を重ねた瞬間に決めていた。


……陸先輩と、別れるという事を。


タケルと今後どうなるなんてわからない。


けれど私は自分の気持ちに気付き、認めてしまった。


溢れんばかりの、タケルへの想いを。
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