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恋花火
第49章 ALONE
このままこうしていても、風邪をひいちゃうね。


美波はそう言って、私の手を引き歩き出した。


向かったのは学校。


私はたくさんのポリ袋を手にレンの所へ向かった。


レンはタケルの一番の親友。


顔を見たら、タケルの事を思い出しちょっぴり泣きそうになった。


私たちは授業をふけて


三人で屋上へ続く階段の踊り場へと向かった。


「これ、本当は菜月に秘密って言われたんだけどさ」


そう言ってレンが見せてきたのは、一足のスパイク。


黒地に赤いラインが伸びているデザインのもの。


「すごい年季入ってるね。」


美波はそう言ってまじまじとそのスパイクを覗き込んだ。


「菜月なら、わかるよね。」


私は視界がぼやけ、そのスパイクが滲んで見えた。


わかるよ


だってそれは、私がタケルにあげたスパイクだから_____





「思い返せば、あれは東京行く直前だったんだろうね。いきなりフラッと家に訪ねてきてさ。これ預かってて、って。」

「タケルとはそれから連絡とってないの?」

「何度か電話してみたけど、応答なし。留守電に切り替わっちゃうんだよなー。」


私はレンと美波のやり取りを聞きながら、スパイクを見つめた。


このスパイクは、タケルが部活の先輩にスパイクを壊された時に私が買ってあげたもの。


……まだ持ってくれてたんだ……。



タケル


早く帰ってきてよ


今頃一人で泣いてるんじゃないの?


本当は泣き虫だってこと、知ってるよ。


居場所がないなんて、思わなくてもいいよ


私がタケルの居場所になりたい







「……会いたい」


本心から出た言葉だった。


口に出すと、涙まで出てしまいそうになる。


会いたい


会いたい


会いたい


思えば思うほど愛しい


苦しい







「……タケルの留守電に入れとこうかな。人の女に手出しといてなに逃げてんだってね。」



黙り込んでしまった私たちの背後から、そう声がして


振り向くとそこには


陸先輩が立っていた。







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