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恋花火
第52章 the one

……もしかして、陸先輩がここを通りかかるのをずっと待ってたのかな?
郁さんの鼻の頭と、指先は真っ赤だった。
「あ!」
そういえばさっき帰り際、栗林翔太にあったかいココアを貰ったことを思い出した。
タケルがいなくなってから、栗林翔太はなにかと私に物をくれる。笑
それは日によって購買のパンだったり、今日みたいに飲み物だったり様々で。中でも一番嬉しかったのは、タケルの写真。
タケルのファンは実在するらしく、その子達から回収したタケルの写真だと栗林翔太は言った。
「あげます、それ。」
「え?」
「私より、郁さんに必要だと思うので……」
まだほんのりと温かいココアを手渡すと、郁さんは無言でそれを受け取った。
栗林翔太からの貰い物を人にあげちゃった。ごめんね。
「……サンキュ」
かなり耳を澄まさなきゃ聞こえないくらいの小さな声だけど、確かに聞こえた。
「どういたしましてー」
すると郁さんは、今まで見たことないくらい優しい顔で笑った。
「……もう少しで花火大会あるの知ってる?」
「もちろん知ってますよ。」
「前にさ、陸張り切ってたんだよね。それに行くんだーって。」
「……それってもしかして……」
「そう、おまえと。」
……覚えてるよ。
年が明ける前
約束したもん。
きっと今は無効になっちゃったけど……。
「三人で行かね?」
「三人て!?」
「俺、おまえ、陸。」
「……ごめんなさい、私……」
「陸いるとマズイ?じゃあ俺と二人で行く?」
「いや、それもっとマズイですから!」
郁さんはまた笑って、「あいつと行くのか?」って聞いてきた。
「無神経だったなら謝る。」
先に謝られちゃった。
「………行きたいけど、もう、いないから……」
その花火大会には、毎年タケルと行っていた。
小さな頃から、仲良しの地元の友達何人かで行くのが恒例だったその花火大会。
けれど14歳の、あの時からは
二人で行くようになった。
海辺で打ち上げられる花火。
それを見ているタケルの横顔に見惚れて
私はロクに花火が記憶に残っていないほどだった。
郁さんの鼻の頭と、指先は真っ赤だった。
「あ!」
そういえばさっき帰り際、栗林翔太にあったかいココアを貰ったことを思い出した。
タケルがいなくなってから、栗林翔太はなにかと私に物をくれる。笑
それは日によって購買のパンだったり、今日みたいに飲み物だったり様々で。中でも一番嬉しかったのは、タケルの写真。
タケルのファンは実在するらしく、その子達から回収したタケルの写真だと栗林翔太は言った。
「あげます、それ。」
「え?」
「私より、郁さんに必要だと思うので……」
まだほんのりと温かいココアを手渡すと、郁さんは無言でそれを受け取った。
栗林翔太からの貰い物を人にあげちゃった。ごめんね。
「……サンキュ」
かなり耳を澄まさなきゃ聞こえないくらいの小さな声だけど、確かに聞こえた。
「どういたしましてー」
すると郁さんは、今まで見たことないくらい優しい顔で笑った。
「……もう少しで花火大会あるの知ってる?」
「もちろん知ってますよ。」
「前にさ、陸張り切ってたんだよね。それに行くんだーって。」
「……それってもしかして……」
「そう、おまえと。」
……覚えてるよ。
年が明ける前
約束したもん。
きっと今は無効になっちゃったけど……。
「三人で行かね?」
「三人て!?」
「俺、おまえ、陸。」
「……ごめんなさい、私……」
「陸いるとマズイ?じゃあ俺と二人で行く?」
「いや、それもっとマズイですから!」
郁さんはまた笑って、「あいつと行くのか?」って聞いてきた。
「無神経だったなら謝る。」
先に謝られちゃった。
「………行きたいけど、もう、いないから……」
その花火大会には、毎年タケルと行っていた。
小さな頃から、仲良しの地元の友達何人かで行くのが恒例だったその花火大会。
けれど14歳の、あの時からは
二人で行くようになった。
海辺で打ち上げられる花火。
それを見ているタケルの横顔に見惚れて
私はロクに花火が記憶に残っていないほどだった。

