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恋花火
第53章 Destiny
ビクッ


身体が動いて目が覚めた。


「いいよ、寝てて。」


いつのまにか、私はまた眠ってしまっていた。


タケルの肩によりかかって。


「おじいちゃんは……?」

「まだ。」


知らないうちに繋がれていた手。


その手は強く繋がれていて


心が落ち着いていく。


「もうジジイスクーター禁止だな。」


タケルが呟く。


タケルはおじいちゃんが助かるって信じきっていて


根拠はなさそうだけど、私まで気持ちが前向きになる。




「タケル、抱っこして」


この後に及んでなにを言うかと思われそうだけど


タケルは何も言わずに抱きしめてくれた。


これは昔から変わらない私たちのスタイル


強い不安や悲しみに襲われる時


こうして抱きしめられると落ち着いていく心。


トクントクン


交わる二人の鼓動


それはまるで癒しの魔法のようだった。


それまでに抱えていた恐怖も、何もかも包み込んでくれる


タケルがここにいる


タケルが大丈夫って言うんだから


絶対大丈夫なんだ


ギュッと強く抱きしめると、同じ強さで抱きしめ返してくれる。


それがどれだけ安心することか。






しばらくして、手術中を示すランプが消えて


オペ室へ続く通路のドアが開いた。

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