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恋花火
第16章 バイバイFRIEND
「……それ、マジで言ってんの」


ここは駅のホーム


私は雑踏に消え入りそうな声で、かろうじて返事をするのが精一杯だった。


「理由、言え。」

「だから……」


ここで茜先輩の名前を出すことに私は躊躇していた。


別に、茜先輩から何か言われたわけでもない。


ただ


今のバランスを崩したくない


悪者になりたくない


……タケルに、幸せでいてほしいから


「……俺はやだ。菜月と話したい。」

「……ダメ。」

「陸先輩がいいって言ってんならいいじゃん。」

「だからそうじゃないって」

「……なんだよ、マジで嫌なのかよ」


タケル


わかってよ


長年私と一緒にいたのならわかるでしょう?


「バカ女」


タケルは一言つぶやき


私の頭をぐしゃぐしゃして、電車に乗り込んだ。


私は下を向いたまま


自分のつま先をただジッと眺めていた。


茶色のローファーが滲んでいくよ


喉の奥が熱いよ……




涙がつま先にこぼれ落ちる、その瞬間


視界は一気に埋められた。



あったかくて優しい腕に包まれる。


「……ほんと、バカだな。」

「陸先輩……」


どこから見ていたの?


どこまで知っているの?


聞こうと思ったけれど、涙で声が出てこない。


……ううん


そんな事聞くまでもない


陸先輩はきっと、全てを知っているから……


「……優しいんですね。」


そんな私の言葉に、陸先輩は笑った。


「弱みにつけこんでるだけ。」


そう、呟いて。








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