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やさしいんだね
第4章 ロストバージン
 小百合はもう、言葉が出なかった。

 この気持ちを言葉で表すことなんてできっこない。
 こんな幸せな気持ちを言葉で表すことなんて・・・。

 しかし、小百合は無意識のうちに「そんなのうそだ」と可愛くないことを呟いてしまっていた。

「ほんとだって。信じてくれないの?」
「・・・だって、うそに決まってる」

 あくまでも、私は商品で、色黒さんはお客さん。
 好きになってくれるはずなんか・・・・。
 でも・・・・。

 小百合が期待と不安が入り混じった潤んだ瞳で上目遣いに松浦を見つめている間にも、松浦は背中のホックを外し、小百合の身体からブラジャーを剥ぎ取った。
 かさり、と小さな音を立ててブラジャーが絨毯の上に舞い落ちる。
 松浦が思い出したかのようにふふふと笑う。
 日焼けした肌とは対照的な白い歯が光っていた。

「小百合ちゃんって案外疑り深いんだね」

 静かな声で述べた松浦は、襞スカートのホックに手をかけた。
 その次は、ブラジャーと揃いのショーツ。
 全裸になって初めて小百合は勤務中であることを思い出し、やっとの思いで松浦の衣服を脱がせた。
 途中、ハリのある柔らかい乳房や華奢な首元に何度もキスされながら。


 小百合は夢見心地で松浦に手を引かれ、絨毯に落下したシズクの抜け殻を踏みしめてシャワールームへ向かった。


 蛇口を回す小百合の背後に松浦は立ち、小百合の柔らかい身体を後ろから撫で回した。
 シャワーから勢いよく流れ出るお湯が、タイル張りの壁や床にでたらめに飛沫する。
 松浦の大きな手のひらがついに、期待でずぶ濡れになった小百合の割れ目に触れたせいだ。

「あぁ・・・、」

 2本の指で割れ目をなぞられ、小百合は背中を反らせた。
 その唇を逃さないよう、松浦はしっかりと小百合を腕の中に捕らえる。
 割れ目の奥と同じくらいねっとり濡れた口の中を舐められているあいだに、小百合は自分でも気付かないうちにシャワーを床の上に落としてしまった。

 ごつんとタイルが鳴ったけれど飛沫音のほうが激しく、小百合の耳には届かなかった。

 噴水と化したシャワーが水圧のせいで床の上を右往左往し、2人の足に当たる。
 狭い空間にはすでに湯気のせいでない熱気が充満しきっていた。


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