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やさしいんだね
第4章 ロストバージン
 松浦は動きを止めたまま、しばらく黙り込んでいた。
 けれどもじきにいつもの顔でふふっと笑い、

「俺は・・・アツシっていうんだ。佐治、敦司」

 そう述べると、小百合の身体を強く強く抱きしめて離さなかった。

「あつし、さん・・・?」

 ゆっくり動き始めた腰の動きを慣れない場所に感じながら、小百合は言葉にならない幸福を全身に浴びていた。


 ―――シズクちゃん、好きだ。


 小百合の排泄器官で果てるまでの間に、松浦・・・いや。
 佐治敦司は、一体何度そのように熱っぽく囁いたか分からなかった。
 小百合がようやく幸福な痛みから解放され乱れた真っ白いリネンを見ると
、そこには僅かに滴り落ちた鮮血が小さな染みをつくっていただけであった。


「ありがとう」


 小百合から身体を離した佐治は愛おしそうに真っ赤な染みを指先で撫で、それから小百合の瞳を見つめて礼を述べた。
 小百合は未だに残る痛みに耐えながらも心の底から湧き出てくる表情を顔いっぱいに浮かべ、佐治に「お誕生日おめでとうございます」と言った。

 
 時計の針は40分ほどしか進んでいなかった。
 もしかしたらあの時も、永遠に思えたけれど実際はこんなふうにあっという間の出来事だったのだろうか。
 小百合はどうしても、あの日教室で起きた出来事と今日のことを切り離せずにいた。

 佐治は一度射精したせいか、或いは小百合の身体を気遣ってか「つぎは普通に抱きたい」とは言わなかった。
 代わりにバスタブに熱めの湯を張り、一緒に温まろうと小百合を誘った。
 断る理由は何もなかった。


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