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やさしいんだね
第4章 ロストバージン
 先ほどとは違う、柔らかい熱気がシャワールームに充満している。
 小百合は佐治の膝の上で包まれるように後ろから抱きしめられ、痛みと幸福の余韻に浸かっていた。


「あのさ」

 佐治の優しい声が小百合の鼓膜に響く。
 湯気が充満したシャワールームと同じようにぼんやりした頭で、前を向いたまま小百合は小さく返事をした。


「なぁに」
「ずっと気になってたんだけど」



 佐治は小百合の豊満な白い乳房をやわらかい手つきで揉みながら、遠慮がちに口を開いた。


「なんで、こんな仕事を?」


 小百合は脳天に打ち水されたような気持ちで振り向いた。
 佐治の視線は湯船の外で濡れている薄黄色のシャワーカーテンに向いていた。


「プライベートなことを尋ねてしまってごめん。でも、知りたくて」


 先ほどまで佐治のものが入っていた場所がズキンと痛む。
 あの時とは違う、あの時とは・・・。


「話せないことなら無理には聞かないよ。ごめんね」


 自分に言い聞かせても、嫌な記憶が脳裏にちらついて離れない。
 だから小百合は詫びを入れた佐治にわざと明るい調子で返答を述べた。


「ううん!全然いいよ。敦司さんの質問ならなんでも答えるよ!うーんとね。この仕事を始めたきっかけかぁ・・・。パパが死んじゃったから、かな?」


 ズキン、ズキン。
 痛みが鼓動と共に湯船に広がっていく。


「うーん。どこから、なんて説明したらいいんだろ・・・。簡単に言うとね、私のパパは最悪な人だったんだ。ろくでもない男っていうのかな?働かないのにギャンブルと女が好きで。でもママはパパのことが大好きで、だからママが昼も夜も働いてパパを養ってあげてたの。でも色々あってパパが死んで、それがきっかけでママがおかしくなって働けなくなっちゃって、そのせいで私の給食費も払えなくなって・・・・」


 そこまで話したとき、目から不本意なものが溢れ出そうになったことに気付いた小百合は、慌てて首を左右に振った。



「まぁ、とにかくお金がいるなぁって思ってさ。ママを助けなきゃって。だからね私、お医者さんになろうと思ったんだ」

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