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やさしいんだね
第4章 ロストバージン
 湯船から上がり佐治に分厚いバスタオルで身体を拭いてもらうと、小百合にはあと20分しか残されていなかった。

 小百合は時折突き刺すような痛みを覚えたものの、ごく普通に歩けたし、シーツの小さな染みが物語っていた通り、血はそれ以上流れ出る気配がなかった。

 小百合はようやく安堵し、愛しい男に処女を捧げることが出来たという喜びだけを実感としてかみ締めながら、ブルーのワイシャツに袖を通す佐治の目の前でベッドに腰掛け、ドライヤーで髪を乾かした。

「シズクちゃん」

 名前を呼ばれ顔を上げると騒がしい温風の向こうに、首に銀色のネクタイをぶら下げ、口に煙草をくわえた佐治のリラックスした笑顔が見えた。

 小百合はスイッチを切り、返事をした。
 佐治は黙って小百合の横に腰を下ろす。
 スプリングが深く軋む。
 小百合が右隣を見上げると佐治はちらりと歯を見せるように口角を上げて「君は真面目な子だね」と言い、それから小百合の華奢な肩を抱き寄せた。
 伸び始めた佐治の髭が小百合の半乾きの頭髪と擦れ、じゃりっと鳴る。
 大きい手のひらは小百合の手を包むように撫でていた。

「もうひとつ、聞いてもいい?」

 小百合は答えられなかった。

 もう、時間がもうない。
 早く髪を乾かさなきゃ。
 早く制服を着て、ソンを待たせないよう・・・延長料金がどうこう言われないようにしなきゃ。
 でも。

 小百合の揺れる眼差しに、佐治は小百合からの返答を得ないまま尋ねた。
 それは挿入を開始したときと同じ手順だった。


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