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やさしいんだね
第5章 鮮血と赤箱
 小百合が重たい瞬きをしたとき。
 景色はあの日千夏と共に過ごしたテーマパークの夕暮れのオレンジから、大学病院の夜間救急搬入口を示す点滅ランプの不穏な赤色へと代わった。


 千夏の声が脳裏に消え、代わりに雑踏に似た男の声がエンジン音に紛れて小百合の鼓膜を揺らす。


「二軒目を出たとき、先輩は言った。風俗行こうぜ、と。俺は満面の笑みで頷いた。受け持ちの生徒の前とはいえ、しばし自分の立場を忘却して本音を語ることが許されるのならば、俺はその時の気持ちをこう表現しようと思う。“イイネ!誰でもいいから女抱きてぇとこだったんだ!”。繰り返しになるがあくまでこれは20代の頃の話であって現在の話ではないからそこは留意して欲しい」



 右隣を見ると、ハンドルを握る八田の姿があった。
 バックミラーに写る赤い点滅が遠のいていく。


「先輩は俺をとある風俗店に連れ込んだ。そこは少し変わったスタイルで、店先にいる客引きのババアに若い子がいい年増がいいか問われ、選択しなければならない方式のようだった。先輩が先に若い子がいいと答えると、ババアは俺に言った。“ニイちゃんごめん、もう若い子が残ってないから年増でもいい?”と。だが俺は前途の通り女なら誰だっていいから抱きたいという実に切羽詰った状況だったために、安易にイイッスヨ、などと答えてしまった。ちなみに料金は1万2千円だったことを今でも鮮明に記憶している」


 今年建て替えたばかりらしい真新しい巨大病棟がバックミラーに遠ざかっていく。
 それとは反比例して、尻の下に敷かれた生理用品のがさつきの感触と共に小百合の意識が輪郭を描いて現実味を帯びていく。



「部屋に通されると、布団の上に1人のババアが入り口に背を向けて座っていた。推定60代前半の、某アキヒロを彷彿とさせる黄色い髪のババアだ。正確には某アキヒロはジジイだがそれに関しては今はどうだっていいから割愛する。とにかく、俺は動揺した。なぜ受付のババアが部屋にいるんだろう?休憩中?もしかして部屋間違って案内された?俺が入り口に呆然と佇んでいると、気配を感じたのかババアが振り向いた。顔は芸人の某兄弟の兄のほうに似ていた。俺はこめかみから汗が滴り落ちる中、笑顔で俺を手招きするババアを愕然と見つめるしかなかった」





 
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