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やさしいんだね
第5章 鮮血と赤箱
 佐治につけられた傷からは今も鮮血が垂れ出て、生理用品の白い化学繊維面を汚しているのだろうか。
 考えながら小百合はラークの赤箱がダッシュボードに仕舞われる一部始終を呆然と見つめていた。



「迷惑かけてすみません」



 小百合が八田にそのようなことを蚊の泣くような声で述べたのは、車が見知らぬ国道を何十分も走り抜けて住宅地に侵入し、入り組んだ路地をくねくね何度も曲がった上でようやく中規模マンションの駐車場に到着した頃だった。


「お子さん、生まれたばっかりなのに」


 エンジンが切れる前ステレオに表示された時刻を確認した。
 デジタル数字は午前2時45分を指していた。
 ソンはもう、面倒なことの処理を終えたのだろうか。
 そんなことも考えた。
 けれど。


「うら若き乙女である君が不安を抱いてしまう可能性のある回答として異性の担任として非常に気を使うところではあるが、質問された以上説明責任があるので正確に答えよう。今、子供はうちにいない。ついでに言うなら奥さんも不在だ。なぜなら彼らは今週末まで奥さんの実家に里帰りしており、本来ならば俺が今日仕事終わりに義実家へ出向き、長男・・・ちなみに君にとってはどうだっていいことだと思うが名前はハルキという。ハルキと人生2度目の対面を果たした上で、一ヶ月以上離れて暮らしている長女のメイと次女のカナと大いに遊んで、そして彼らが寝静まったあとは奥さんや義両親、そして同居の妹さんらと酒でも飲んで和やかに談話したのちに宿泊し、明後日の昼ごろに義父の運転するワンボックスでこの住処まで彼らと共に帰宅する予定だった。ひとつ言っておくが、君と駅で遭遇したのはその途中のことだ。だがこれは予想外のアクシデントであり、意外なことに俺の到着を心待ちにしていたらしい奥さんが烈火の如く怒って俺からの電話を切ったことは今後の夫婦関係を思うと些か不安の種ではあるものの、仮にも俺は君の担任であるという責任のほうが重大であるために、君が俺に詫びる必要は一切ない。ただ、君が俺と2人きりで一晩過ごさなければならないという乙女として・・・いや。人としての不安と嫌悪に苛まれていると仮定するのならば、このような男が運悪く君の担任であったことを心底申し訳ないと思う」


 疲労が全身に押し寄せたので、小百合はもう何も考えられなかった。

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