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初音さんの二十日間
第12章 口は幸いの元?
「すごいじゃない! 初音さん!」

食後のソファーの定位置で、お湯割りをふぅふぅしながら昼間の一件を話すと、柊二くんは万歳する勢いで喜んだ。

「うー…そうかなぁ?」

「仕事の幅が広がっていくってことでしょ? かっこいー!」

「…でもさぁ…柊二くんの大事な日だよ?」

「俺は大丈夫ですって! 学校への乗換もバッチリだし無問題っ! それに」

「ん?」

カップを取り上げ、はずしたメガネと一緒にテーブルに置いた。

「初音さんが頑張ってると思ったら、俺もきっと実力以上のチカラが出せるもん」

チュッと唇を寄せて

「一生懸命な初音さんに俺が弱いっていうの、知ってるでしょ? ね?」

って、それってすごいやる気増強剤なんだけど!

確かに柊二くんの言うように、今までのように資料を作るアシスト的な立場からステップアップするのだから、仕事の範囲が広がるということで。
努力が数字として見えるようになるのはやりがいに繋がるのかな。

「うん、がんばる!」

単純な私のエンジンは、簡単に回転数が上がってしまうようだ。

すっかり馴染んだこの唇を全身で受け止めるその時に、ご褒美だと思えるよう頑張ろうかな。

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