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初音さんの二十日間
第13章 初音さんの二十日目
顔だけ洗い着替えも適当に飛び出した私たちは、東京駅の構内を走っていた。

「いよいよ、初音さんと!って楽しみだったのに!」

寝癖を揺らしながら

「バカ! 俺のバカ!」

同じ台詞をここまで三回聞かされた。

「ねぇ、俺やっぱ明日…」

「それも三回聞いた! 受験終えたご褒美にせっかくグリーン車取ったんだぞ! なにがなんでも、乗れ!」

もつれる脚をなんとか動かし、首にまとわりつくマフラーをはね上げて階段を駆け上がると、発車二分前。セーフ!

「ま、間に合った…」

こんな慌ただしい別れって。なんだかもう。

「…も、早く乗って」

息が上がって言葉も浮かばなければ口も回らない。顔を上げたくても膝が笑っちゃって上を向けない。でもいいや、顔を見たら泣いちゃいそうだもん。


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