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初音さんの二十日間
第3章 初音の心は母心
オフィスに着く手前で声をかけられた。
「結城くん」
「山辺課長、おはようございます」
それほど長身ではないが、バランスの取れた体をハイブランドのコートに包んだ山辺は、不惑の世代に足を踏み入れた人とは思えない若々しさだ。
前を見たまま早口で
「今夜、どうだ?」
囁きながら私をゆっくりと追い抜く。
「すみません、今夜はちょっと…」
返事には応えず歩調を速めて遠ざかる山辺の背中に
『ご・め・ん・ね』
声に出さずに謝った。
「初音っ、おはよ!」
「ぅわ!おはよ」
山辺の背中に見惚れていたので、後ろからの同期の挨拶に飛び上がるほど驚いてしまった。
「あ、あれ、開発の山辺課長」
やり取りに気付かれたのかと再びドキリとする。
「かーっこいいよねぇ、山辺課長。いつ見てもパリッとしてるもん」
「そうだね」
「うちのハゲ課長と取り替えたいよ」
「はは…」
「噂をすればハゲがいる!やだー、エレベーター一緒になっちゃう!」
どうやら探りを入れてきたのではなさそうなので、胸を撫で下ろした。ふぅ、冷や汗出そうだった。
こういうのが不倫のスリルと言うのだろうか?
だとしたら不倫女はみんな短命に違いない。
「結城くん」
「山辺課長、おはようございます」
それほど長身ではないが、バランスの取れた体をハイブランドのコートに包んだ山辺は、不惑の世代に足を踏み入れた人とは思えない若々しさだ。
前を見たまま早口で
「今夜、どうだ?」
囁きながら私をゆっくりと追い抜く。
「すみません、今夜はちょっと…」
返事には応えず歩調を速めて遠ざかる山辺の背中に
『ご・め・ん・ね』
声に出さずに謝った。
「初音っ、おはよ!」
「ぅわ!おはよ」
山辺の背中に見惚れていたので、後ろからの同期の挨拶に飛び上がるほど驚いてしまった。
「あ、あれ、開発の山辺課長」
やり取りに気付かれたのかと再びドキリとする。
「かーっこいいよねぇ、山辺課長。いつ見てもパリッとしてるもん」
「そうだね」
「うちのハゲ課長と取り替えたいよ」
「はは…」
「噂をすればハゲがいる!やだー、エレベーター一緒になっちゃう!」
どうやら探りを入れてきたのではなさそうなので、胸を撫で下ろした。ふぅ、冷や汗出そうだった。
こういうのが不倫のスリルと言うのだろうか?
だとしたら不倫女はみんな短命に違いない。