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初音さんの二十日間
第3章 初音の心は母心
「昼下がりの情事。我が家のリビング。騎乗位のお袋」

感情のないト書きのような説明が、かえってショックの大きさを示しているようで胸が傷んだ。

「引くだろー。引くよな。引いたもん」

三段活用を使うほどドン引いちゃったのか。でもわかるよ、わかる。そんなん最低だわ。

「明日から期末で帰るの早いよ、ってお袋に言っといたんだけどな。聞いてなかったんだよな」

つつかれたニンジンがどんどん小さくなる。

「気づかれないようにそぉーっと回れ右してさ、バカみたいだった、あん時の俺。乗り込んでやりゃー良かったんだ」

「…柊二くん……」

「柊二くんチのお母さん、美人だよねー、なんて言われて俺もちょっと自慢だったりしてさ。でもそーじゃねぇの。乳なんかすげえ垂れちゃってるしさ、くびれなんてないし。そんなカラダで知らねぇオトコの上に乗っかって、あんあん言ってんの。俺、あれからリビングのソファーに座れなくなった。汚なくて気持ち悪くて。なんの罰ゲームだよ!って話」

ニンジンはもう、ぐちゃぐちゃに潰れて形を成していなかった。


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