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初音さんの二十日間
第5章 週末の爆弾
歩き回ったしお茶でも飲もう、と適当なカフェに入るところでスマホが鳴った。

タップしながら「先に座ってます」という仕草の柊二くんにうなずく。

『よーよー、初音よー、元気かよー?』

「夏希ー、久しぶり!」

大学の同級生、今は金融関係の総合職としてバリバリ働くキャリアウーマンは、相変わらずの大きな声で騒がしい。

『初音、今日休みでしょ?どこにいんの?』

「あー、いま新宿付近」

『おぅ、アタシは研修終わりで浜松町にいんのよ。夜空いてるなら、飲まない?』

「連れがいるんだよねぇ」

窓際の席に座った柊二くんを見た。
メニューを置いて振り返った店員さんの頬がほんのり染まっている。
厨房に小走りで入ったところを見ると、中の人たちとキャーキャー言うつもりなのか。

あぁでも本当にあの子、かっこいいなぁ。

おでかけのため、寝癖は無造作ヘアへとチェンジされ、少しうつむいたメガネの上に色っぽい影を落としている。
形よく伸びた鼻梁の下の少し上を向いた唇が、今はキュッと固く結ばれているのは、メニューに迷っているからだろう。

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